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『ゲームの王国』レビュー | 小川哲は日本のSFを変える天才だと確信した

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小川哲 - ゲームの王国 (2017)

 

間違いない、小川哲は天才だ。(おがわさとしと読む)

前作『ユートロニカのこちら側』を読んだ時、これは伊藤計劃の再来か?と思った記憶があるけど、今は確信している。小川哲は日本のSF文学の新しい時代を作る天才だ。

これまで日本のSF業界は早逝の天才の名を取って「伊藤計劃以降」と呼ばれる時代にいたが、SFマガジンの塩澤編集長は小川哲を「伊藤計劃以降」を終わらせた作家と呼んだ。これからは小川哲の時代だろう。

あとがき曰く、この作品は学生時代、つまりアマチュアとして書いたらしい。この作品がを日本SF大賞を獲ったために、専業作家になる決意をしたと。恐ろしいものだ。 


さて『ゲームの王国』が晴れて文庫化されたので読みました。

舞台は1950年代のカンボジアで幕開け。
読み始めると「あれ、SFだと聞いてたんだけど」と思いながら、当時のカンボジアのエグい世界が描かれていく。人が人として扱われない地獄のような世界で、日々絶望と共に暮らしている登場人物たち。

ポル・ポトクメール・ルージュなど実在の人物や組織も登場していて、これは何やら事実を元にした歴史小説か?とか思いながら話を読み進める。(思ってた感じとは違えど、どのパートもスリリングで止められない面白さなので、心配無用)

 そんな中でなんとか生き残った主人公(相当)の子供たちがもしかしてこの世界を変えてくれる展開?とか期待したくなるけど、史実は史実なのでどう展開するのかな…とか思ってると、次々伏線を張り続けたまま上巻は終わってしまう。そして下巻を開くといきなりぶったまげる。上下巻の使い方は、もう日本文学史に残るのではと思うので、ここは上下巻の使い方の歴史に詳しい方の意見を聞きたい。

とにかく、様々な個性的な登場人物が続々と現れてきて全く飽きない。幼い頃から潔癖症な天才児、嘘が見抜ける孤児、土と会話する男、輪ゴムと会話する男、サイコパスな警察などなど。


ちなみに前作『ユートロニカのこちら側』のようなザ・SFみたいなものかと言うとそうではないけど、それでも広義のSFであることには間違いない。
逆に言うと、狭義のSFではない、つまりどのサブジャンルにも当てはまらない(私の知る限りは)。

※余談だけども、SFはSFだと事前に認識して(あるいは物語の早い段階で認識して)読み始めないといけない。この小説も途中で超能力らしきものを持つ人なんかも出てくるので、その時に「なんだよ、こんなのあり得ないだろ」と変なところでがっかりしないためにも、微SFだとしても、これはSFだと知った上で読んだほうがいい。

 

タイトルにもある通り、この小説において「ゲーム」というのは重要なテーマになっている。(がそれがどう物語に関わってくるかを話始めるとネタバレしてしまうのでやめておく)

物語に登場するオリジナルゲーム「人生」が面白そうすぎて、友達とやってみたくなることは間違いない。

 

と言うことで、日本のSF文学の新しい時代の幕開けにおめでとう。

 

『ゲームの王国』

オススメ度:★★★★★

 

小川哲の最新の短編集『嘘と正典』も好評発売中のようですが、その中の1話「魔術師」はKindleで無償配信しているので、そちらも要チェック。

嘘と正典より「魔術師」無料配信版

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ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

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ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)