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書評『銃・病原菌・鉄』:優れた人種が繁栄するわけじゃないという話

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大変ボリューミーな上下巻からなる歴史本をやっとのことで読み終わったので、メモを残しておきます。

 

著者ジャレド・ダイアモンドがあるニューギニア人から聞かれた問いから始まる。「あなたたち白人はニューギニアに多くのものをもたらしたが、なぜニューギニア人は白人に何ももたらさなかったのだろう

つまりは、世界を征服した旧世界側 (ヨーロッパ系・中国系を始めとしたユーラシア大陸側) と征服された新世界側 (アメリカ大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸、その他多数の島国など)、その決定的な差はなんだったのか。大陸によって技術、文明の発展に大きな差があったのはなぜか。

 

例えば、センセーショナルな歴史的出来事で言うと、南米で強大な帝国を築いていたインカ帝国をスペインが征服できたのはなぜか。直接的要因はまさにスペインが「銃・病原菌・鉄」を持っていたからだ。銃で圧倒したという話はよく知られるが、一方で実は旧世界にしかいなかった病原菌が新世界を襲ったという事実もよく知られている。
※スペインによる殺戮より、病原菌で死んだ人数のほうが多い。

しかし、ではなぜスペインは「銃・病原菌・鉄」を持っていて、インカ帝国は持っていなかったのか。他の新世界・旧世界の各国にも同様に。これがこの著作で最も重要な論点。

 

著者の結論は「それは人の差ではなく、その環境の差」だったと言う。決して、人種の能力の差ではない。ただヨーロッパ人・中国人はラッキーだったのだ。

例えば、農耕・牧畜と言った食糧生産を行う民族は歴史的に強い(そうでない民族を圧倒している)ことがわかっているが、しかし、それは人種・遺伝子的な差異ではなく、偶然、そこに肥沃の三日月地帯のような食糧生産に適した環境があったためであり、偶然ユーラシア大陸は東西に長いからこそ、その技術を伝播することができた。

このような論理を人類史における様々なシーンから説明する。今、恵まれている人々もただただ自分たちはラッキーだっただけ、ということを忘れてはいけないし、間違っても優れた民族なのだ、などとは考えてはいけない

 

非常に興味深い本であることは間違いないが、一方で、著書の解釈次第じゃないかと思わせる部分もあったり、遥か昔のことなのに異常に当時の様子が克明に描かれていたり、信憑性がやや怪しい部分があるので、その違和感は忘れずにいたいところ。少なくとも「日本人が不便な漢字を使い続ける理由は、漢字は社会的ステータスが高いからだ」というのは大間違いだと思う。(下巻p72、230)

 

あと、タイトルが若干釣りっぽいというか、確かに歴史において銃、病原菌、鉄は重要な要素として紹介されるものの、一番重要な主張は前述の通り。 

 

銃・病原菌・鉄 上巻

銃・病原菌・鉄 上巻

 
銃・病原菌・鉄 下巻

銃・病原菌・鉄 下巻